【やっぱりよくわからない】デザイン思考ってなに?


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【やっぱりよくわからない】デザイン思考ってなに?

ここ最近、様々な記事やセミナー等で “デザイン思考” という言葉が話題になっている。しかしながら、本来の意味を分かっている人は少ないのでは無いだろうか。むしろ、この表現は多用されすぎている感のあるバズワードであり、実際聞いてみると人それぞれにその解釈と概念が違う事が多い。 “これからのビジネスでイノベーションを生み出すにはデザイン思考が重要だ” といったフレーズもよく聞くが、実際その具体的な活用方法やメリットを提案しているケースはあまり無い。恐らく言っている本人もイマイチ理解していないかもしれない。

ということで、多くのイノベーションが生み出されようとしているサンフランシスコ ベイエリアで一般的に解釈されている “デザイン思考” の意味をシンプルに分かりやすくまとめてみる事にした。ちなみに下記の内容の元になったのは、btrax社が毎回異なるテーマで定期的に行っている社内ワークショプにて、同社CEOのBrandonがスタッフ向けに行ったプレゼンの内容を日本語にしたものである。


What is Design Thinking? – presented by Brandon K. Hill

デザイン思考 (Design Thinking) の定義とは?

Wikipediaによると、デザイン思考の定義は下記になります。

“デザイン思考とは不明確な問題を調査し、情報を取得し、知識を分析し、設計や計画の分野でソリューションを選定するための方法およびプロセスを指す。”

わかりましたか? 僕にはさっぱり分かりません。とにかく説明が難しすぎて、なんに事を言っているかさっぱりチンプンカンプン。では、誰にでも分かるデザイン思考の本当の意味とその価値をこれから説明したいと思います。

“デザイン思考”と”デザイン”とは大きく異なる

デザインする行為はデザイン思考のごく一部に過ぎません。最も重要なのはデザイン的プロセスを通し、どのような問題に対してもクリエイティブなアプローチ活用して解決しようとする考え方です。そして、デザイン思考は:

  • いかなる種類のビジネスにも活用可能
  • いかなる部署/役職においても活用可能
  • スタッフ全てがそのプロセスに参加可能

なのです。デザイン会社やデザイナーだけのものではありません。

“デザイン”の言葉の裏に隠されたあまり知られていない定義

ちなみに、”デザイン”という言葉には大きく分けて2つの意味があるのをご存知でしょうか?参考までに説明しておくと、通常グラフィックデザインやWebデザインなど多くの場面で使われるデザインの意味は、設計したり、色をぬったりと、いわゆるデザイナーが行うクリエイティブな行為を指します。その一方で、”デザインする”という動詞の意味の中には、”新しい機会を見つける為の問題解決プロセス”、という定義もあります。

抱えてる問題に対して少し違うプロセスで取り組むことで、今までには考えつかなかった新しいチャンスが見えてくる。それがデザイン思考が生み出す大きなメリットです。それを実現するのはごく抽象的なアイディアから少しずつ現実的なプランに落とし込み、最終的には全く新しい創造を生み出す6つのプロセスです。それでは具体的にそのプロセスを見ていきましょう。

デザイン思考を構成する6つのプロセス

1. 問題の神髄を見極める

通常の問題解決プロセスにおいては、その解決方法に重点が置かれます。しかしながら、デザイン思考的プロセスでは、その問題自体が本当に取り組むべき問題であるかどうかを一度じっくりと考え、最も解決するべき問題を見極める事から始まります。

例)
Q. どうすればDVDドライブよりも薄いノートブックパソコンを作ることが出来るだろうか?
A. そもそもDVDドライブは必要なのか?

2. 出来るだけ多くの解決策を考えてみる

たとえ問題に対する解決策が容易に見つかると思われる時にも出来るだけ多くのアイディアを出してみる。それにより今までには考えつかなかったチャンスが見えてくる場合もある。

例)
出来るだけ軽くて薄いパソコンを作り出すため、DVDドライブ以外にも通常のHDDやLANジャックも取ってしまおう。いまどき、多くのユーザーはWifiクラウドを利用するのが主流だからだ。

3. 幾つかのアイディアを選び、研ぎすます

一つ前のプロセスで出たアイディアの中でも、新しい機会を与えてくれそうなものを選び、より改善する。その際には既存の概念に捕われすぎないようにする事。そして、それらのアイディアをテストしてみてより精度をアップさせる。

例)
パソコンの最終スペックには出来るだけ”攻めた”アイディアを盛り込み、周りの人々の反応を確かめてみる。今までに無いタイプのものを作るので、見た目も最新的なものにする。

4. 最終的なアイディアに絞り込む

最初に与えられた問題を解決し、それに加え、全く新しいチャンスを与えてくれる最終的なアイディアを採用する

例)
出来るだけ薄くて軽量なノートブックパソコンを作り出す為に、光学ドライブとLANジャックを廃止し、USBも2つのみ、そしてフラッシュドライブ記録デバイスとして採用する。そしてデザインは出来るだけスタイリッシュに。

5. ビジュアルデザインに落としこむ

全てのアイディアが決まったら、ここで初めて視覚的なデザインやプロトタイプ作成を開始する。

例) スペックが決まったパソコンのCGモックアップを作成してみよう。

6. 実行してみよう!

今までのプロセスで決定した事柄を元に実行あるのみ。

例) できました!

mba

 

では一言でデザイン思考とは何なのか?

全てを “Why” から始め、最終的にイノベーションを創り出すプロセス

 

デザイン思考を適用したWebサイトUXデザインプロセス例

それではこのデザイン思考のプロセスを、我が社の業務の中心でもあるWebサイトやUXデザインのプロジェクトにおけるプロセスにあてはめてみましょう。まずはサイトを作るもしくは作り替える理由をユーザー視点と、運営側の視点から考え、最も解決すべき問題を3つ程分析します。それを元にサイトに実装される機能とコンテンツ内容のアイディア出しを行います。

その後、さらに具体的なプランに落とし込む為に情報アーキテクチャとインタラクションのデザインプランを行った後に、ここで初めてインターフェイスとナビゲーションの設計を行います。そして5つめのステップでやっと実際のビジュアルデザインに取りかかります。そして最後がサイトを動かす為のフロント+バックエンドコーディングを含むインタグレーションのプロセスになります。

全てのプロジェクトにおいてこのプロセスをしっかりと踏む事により、手戻り防止による全体的な時間節約とクオリティの向上を望む事が出来るのです。そして忘れてはならないのは、常により良いサービスを提供する為にこのプロセスを繰り返す事。 process

最後に:

デザイン思考が最も活躍するのは、もの作りやクリエイティブ系の仕事だと思われがちですが、実はそうではありません。どのような事柄に対しても、解決すべき問題の神髄を見極め、出来るだけ多くの解決アイディアを考慮し、全く新しいチャンスを見つける事が出来ます。

デザイン思考は私たちの生活におけるあらゆる問題解決に活用することが出来るのです。日々の生活にもイノベーションを。 – Brandon K. Hill