今さら人には聞きにくい「ブランディングとは」
今さら人には聞きにくい「ブランディングとは」
- Jul 25, 2012
ブランディングー誰もが耳にしたことのある言葉だと思うが、皆さんは「ブランディング」と言われてどんなことを思い浮かべるだろうか。買い物好きであれば、シャネルやルイ・ヴィトンなどの高級ブランドのロゴマークを、ビジネスマンであれば、自らの会社のブランドマネージャーの顔を思い浮かべるかもしれない。また、最近話題の”個人”としてのイメージアップであるパーソナルブランディングを連想する場合もあるだろう。その一方で、”ブランド”や”ブランディング”の本当の意味をしっかりと説明出来る人は少ない。
今回は、btraxでこれまでグローバルブランドの確立を主な目的とし、数々のクライアントに対してブランディングサービスを提供して得た知識・経験も踏まえ、
という、基本的な部分からスタートしたいと思う。
「ブランディング」とは
- ブランド・ロイヤルティ(ex:「やっぱビールはアサヒに限る」)
- ブランド認知(ex: 「あ、資生堂の新しい化粧品が出てる」)
- 知覚品質(ex:「ナイキのスポーツシューズならまず間違いないだろう」)
- ブランド連想(ex:「ジャガー=高級車」)
ご覧の通り、我々が普段の生活を通して何気なく思っていること、そしてその潜在イメージに基づく行動が、企業にとって極めて重要な資産となっているのである。逆にブランド価値が低い競合が同じような商品やキャンペーンを行ったとしても、それほど消費者の行動に響か無い可能性が高い。人々の心に宿る資産がブランド力である。(これらの資産の集合が、「ブランド・エクイティ」と呼ばれる)
※以前「エモーショナル・エクイティ」(顧客に「その会社が大切だ」という感情を抱かせること)についても記事を書いたことがあるが、それとも共通点が多い。【これからの会社に最も重要な資産: エモーショナル・エクイティ】
ブランディングは、企業が長期的に競争で生き残っていくために欠かせない総合価値がもたらすメリットを他方向の企業活動に対し提供するものである。その意味では「製品・サービスをどうやって売るか」という側面の強いマーケティングよりも、階層が一つ上にあると言える。
なぜ私たちはブランディングに力を入れるべきなのか
・ブランディング構築を無視すると何が起こるのか
覚えておかなければ行けないのは、ブランディングは短期で効果が表れてくるものではない、ということである。また、広告や流通のコストが高く、どこに行っても数えきれないほどのブランドで溢れかえっている今、ブランドを確立することが非常に困難なのは事実である。
しかし、そこでブランド構築を無視し、顧客のロイヤルティを獲得できなかった場合、企業はいわば「その日暮らし」的なプロモーション、つまり価格切下げに頼らざるを得なくなる。価格切下げによるプロモーションが行われ、それがサイクル化してしまうと、もはやその流れは止められない。顧客も取引先もそのサイクルを覚え、「セールになるまで買うのはよそう」「どうせまた安くなる」など、そのサイクルに合わせて購買を決めてしまうからだ。それは消費者でもある私たち自身が実生活で経験していることだろう。
・ブランディングの効果
多くの企業が、かなりの予算と時間を費やしてブランディングに取り組んでいることと思うが、上述した通り、見えない価値であるだけに効果が図りにくいというところが難点である。しかしながら、ブランディングが企業に大きなメリットをもたらすことは証明されてきている。果たしてどういう点が「ブランディングの効果」として考えられるか?次の3点が挙げられるのではないだろうか。
1.収益アップ
靴屋さんを例にとってみよう。皆さんがもし「知らないブランドAのシューズ」と「ナイキのシューズ」で悩んでいたとする。デザインは良く似ていて、価格はAの方が5000円、ナイキの方が6000円としよう。この時、皆さんはどちらのシューズを選ぶだろうか?「1000円の差なら、ナイキの方が有名だし品質も信頼できるから、ナイキにするか」と思う人も多いのではないだろうか?消費者心理としては、そのブランドを身につける事で、自分自身もその多少也ともブランド力を手に入れられると感じるからである。
また、ブランディングを非常に高いレベルまで昇華する事で、商品及びサービス力を独り勝ちレベルまでに高める事も可能だ。例えば、パソコンは、Mac, 携帯はiPhone, 音楽はiPod, Apple製品しか買う気にならないという消費者もいる。そのような人々の多くが、Apple製品の商品力と同時に、ブランドに対する絶大なる信頼 “Appleであれば大丈夫”といった思いがあり、競合の付け入るすきは無く、そこには価格競争は存在しない。
このように、名前が認知され、顧客のロイヤルティが高まるにつれ、収益の継続的な安定・増加が期待できる。収益が増加する理由については、以下のことがあるだろう。
- 顧客の「継続的な購買の動機付け」ができる(ブランドに対する好意・信頼の獲得、スイッチングコストの発生など)
- 似たような商品、サービスであったとしても、競合との差別化ができる
- ワンアンドオンリーの存在になる事で、価格維持あるいはプレミアム価格が期待できる(値崩れもしにくい)
実に多くの場面で、ブランド力は収益アップに直結した効果を発揮する。よくブランディングとマーケティングを勘違いされる方がいるが、基本的にはブランディングは商品やサービスの単価に対し、マーケティングは顧客へのリーチに影響を与える。
2.支出の削減
このようにブランド力を高める事で、支出の面でも優位に交渉を進める事が出来き、利益向上にもつながる。また、場合によっては無料で商品やサービスを獲得する事が出来る場合もある。
3.優秀な人材の獲得
実は、高いブランドの効果がもっとも発揮されるのが、人材の獲得シーンであると思う。日本の就職活動をイメージすると理解しやすいのかもしれない。今でも多くの就活生は名前が広く知られている企業や、いわゆる「大企業」に惹かれる傾向がどうしてもある。毎年発表される「就職したい企業ランキング」に入っている企業が必ずしも頼りも絶対的に良い条件を提示しているわけではないが、そのほぼすべてが高いブランド力を持つ企業である。人気が高い企業になる事で自ずと優秀な人材からの応募も増える。そして応募を動機として、それらの企業のブランドイメージ・ネームバリューが大きな役割を果たす。やはり就職した後に、周りに自慢したい会社で働きたいと思うのは人情である。
業種・勤務条件・待遇などがほぼ同じ企業CとDがあったとして、そのうちCは世間に名の知れた企業、Dは無名の企業だったとする。皆さんがその2社の内定をとったなら、どちらに行くだろうか?また、Cの方が労働条件や待遇が少し悪かった場合、皆さんはそのまま素直にDを選ぶだろうか?
「価値が高いと思われている企業で働きたい」という心情は、「あのブランドバッグを手に入れたい」「あのブランド車に乗りたい」などという心情と、どことなく似通っている。その企業に属するということが、彼らに満足を与えているのだ。また、一度就職した後も、ブランド力の高い会社で働き続けたい、この会社の名刺を持っている事が誇りである、この社名を出すと合コンで持てる等、それぞれの場面で会社のブランド力が実力を発揮し離職率を下げる。
企業からしてみると、同じコストをかけてもより優秀な人材を獲得・意地する事が出来るブランド力には大きな魅力がある。